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中国映画の名作『太陽の少年』について

 20代後半、中国映画ばかりを配給していた会社(部署)で働いていました。徳間書店という出版社の中に東光徳間という変わった名前の部署があり、5~6本の映画を週替わりで上映する「中国映画祭」という特集上映を年に1回、そして、年に2本ほどの中国映画を配給していました。私の仕事は、パブリシティと呼ばれるもので、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞をベースに展開する宣伝活動です。

 

 私がここで初めて担当したのが、『阳光灿烂的日子』。邦題は『太陽の少年』で、中国国内では、「经典」と言われる名作です。

 

 公開を3か月後にひかえた頃、主演の夏雨さんがプロモーションのために来日してくれました。実際に会った彼は、映画の中の少年の面立ちは影を潜め、もう青年になっていました。彼は、その頃は大学生だったと思います。

 

 朝から晩までメディアの取材がありましたが、嫌な顔ひとつせず、カメラの前ではポーズをきめ、記者の質問には一つ一つ丁寧に答え、取材の合間にはスタッフと打ち解けて、完璧なパフォーマンスでした。

 

 ある日、夜に少し遊びに行ける時間ができました。未成年なのでお酒は飲めませんし、翌日も朝から取材が入っていたので、あまり派手に遊ぶわけにはいきません。ゆりかもめに乗ってささやかな東京観光をしました。立ち寄ったデパートのおもちゃ売り場で、恐竜のぬいぐるみを頭にのっけておどけていた彼の姿、あの時の笑顔はまだはっきりと思い出すことができます。

 

 この映画をご存知ない方、ぜひ、ご覧になってみてください。舞台は文化大革命の時代の北京です。映画の中で描かれている、首都で青春期を過ごした少年たちの姿は、一般的な文革の情報しか知らなかった私にとってはとても意外でした。