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ヒアリング力をつけるために

 20年ほど前、サイマルアカデミーという通訳養成スクールに通っていた時のことです。ネイティブスピーカーが話す弾丸のように早い中国語の聴き取りに私たち受講生はみんな苦心していました。中国語を聴き取れないので日本語もしゃべれないわけですから、教室はいつも静か。そんな私たち受講生に先生が一言。

 「知らない言葉は100回聞いても理解できません。」

 確か、CCTVの経済ニュースを教材にした通訳訓練の時だったと思います。確かに、中国語の経済用語を知らなければ日本語に訳すことは不可能ですよね。さらに、中国語の経済用語を聴き取れたとしても、日本語の経済用語を知らなければ適格な訳出はできません。

 つまり、ヒアリングの力をつけたいなら語彙の数を増やすことからスタートしなければならないのです。

 

 では、語彙の数が増えればヒアリングの力が自然につくかというと、これもちょっと違います。語彙が増えたら、次は耳の訓練が必要になってきます。早いスピードに耳を慣れさせるのです。

 中国語力をつけようとするとき、一般的に、読解は自分のレベルより少しおとしたテキストを大量に読み、ヒアリングのトレーニングは自分のレベルより速いスピードの音源を聴くのがよいと言われています。

 読解もヒアリングも、要はより多くの情報をより早く処理する力を養うということがトレーニングのポイントなのですね。

 

 かといって、内容を理解していない動画や音源を聞き流しても全く効果がないかというと、それもちがうかな。先ほど、YouTubeで見つけた動画はイタリアの人が中国ドラマの解説をしているもので、私はそれを30分ほど聞き流していました。最初は、ちんぷんかんぷんの言語が耳に入ってくる違和感があったけれど、動画が終わるころにはイタリア語の音が耳になじんできて、彼が何度も繰り返すキーワードを聴き取れるようになっていました。ただ、音は聴きとれても意味は分かりませんでした。

 

 私が最近よく聞き流しているのは『一席』という番組です。TEDのような番組で、様々な分野の専門家が30分~1時間の講義をしています。時間がある時は、その講義を聞きながら単語帳をつくって意識的に語彙を増やすようにしています。