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リスニング力をつけるために

 20年ほど前、サイマルアカデミーという通訳養成スクールに通っていた時のことです。ニュース番組でアナウンサーやコメンテーターが話す弾丸のように早い中国語の聴き取りに私たち受講生はみんな苦心していました。

 通訳訓練なのに中国語が聞き取れないので訳せない、つまり日本語さえ発することができない。教室はいつも静かでした。

 

 そんな私たち受講生に先生が一言。

 「知らない言葉は100回聞いても聞き取ることはできません。」

 確か、CCTVの経済番組を題材にした通訳訓練の時だったと思います。

 

 確かに、中国語の経済用語を知らなければ日本語に訳すことは不可能です。しかし、そもそも日本語の経済用語を知らなければ、そして経済に関する知識がなければ、中国経済に関する通訳などできるわけがありません。

 

 「ヒアリング力をつけるにはどうしたらいいか?」は中国語学習の一大テーマです。その答えは「語彙を増やす」と「ネイティブの話す早さに慣れる」ことだと私は思います。

 

 「語彙を増やす」というのは、単語の数を増やすということでは不足していると思います。単語の発音と意味だけ知っていても会話の中で運用することは難しいからです。その単語がどのような文脈で使われているかを知ることは運用力に直結するはずです。

 

 その単語がどのようなシチュエーションで、どのような文脈で使われているかを理解し、実際に自分が使える語彙を一つずつ増やしていくしか上達の道はないように思います。

 

 「自分が使える言葉、話すことができるフレーズは聞き取ることができる」とは、英語の先生たちもよくおっしゃっています。

 

 自分が理解していることは、日本語でも中国語でも聞き取れるはず。

 

 このように考えると、20年前に私がやらなければならなかった授業準備は以下の通りです。

 

① 日本語の経済ニュースを片っ端から読み、経済に関する知識をつける。

② 日本の経済ニュースに登場する専門用語集をつくる。

③ 日本語の専門用語を中国語に訳す。

④ 中国語の経済ニュースを何度も聞く。

 

 ヒアリング力をつけるためには語彙力が重要で、さらに、その語彙はもちろん、「ネイティブに通じる」正しい発音で話された方がよいわけです。「発音のクオリティ」「語彙力」「話す力」「聞く力」は、お互いを補完しあいながらあなたの中国語のコミュニケーションを支えています。

 

 ヒアリング力だけではなく総合的な中国語力をつけたいとしたら「通じる発音」は必須です。文法や単語はテキストで学べますが、発音だけはプロの指導を受けインタラクティブな手法で習得することが最も効率的だといわれています。

 

 中国語をはじめようとされている方、発音の学びなおしを考えている方には、ぜひ、プロの発音指導をお試しいただければと思います。