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HSK6級でも中国語を話せない訳

 私がHSK6級を取得したのは15年ほど前ですが、その当時、私は中国の人と会話をすることができませんでした。

 

 6級取得に必要な語彙数は5000くらいですし、読解の問題では自然科学、歴史、故事、文化など多岐にわたるテーマが取り上げられますから、当時、すでに大抵のトピックは中国語で理解できていたはずです。

 

 中国語研修学校で私を仕込んでくれたハルピンと北京出身の先生方がビシバシ発音を鍛えてくれたので、発音には自信がありましたし、音読が大好きで、どんな隙間時間でも飽きることなくテキストや物語の音読をしていました。しかし、当時、私はモヤモヤ感がマックス。学校内外のスピーチ大会では賞をもらい、発音を褒められるのに、いろんな言葉を知っているのに、けっこう難しい文法も理解しているのに、いざ、中国の人との会話となるとそれを発揮できない、、、。

 

 HSK6級をとればペラペラに話せるようになると思って勉強をがんばってきたのですから、6級を取得しても理想通りに中国語を話せない自分に絶望していました。

 

 最高級をとっても話せない自分。「中国語できます!」と堂々と言うことができず自己嫌悪の日々が数年続きました。

 

 今、考えてみると、あの時の私は「話せるようになる仕組み」が全然わかっていなかったのです。

 

 「読める回路」と「話せる回路」の違いが分かっていなかったんですね。そして、当然、「聴ける回路」もなかなか発達しなかった。

 

 中国で生活をしている人は生活の中で自然に「聴ける回路」と「話せる回路」が養われるのかもしれませんが、日本にいながら中国語を話せるようになるには、この3つの回路の構築に意識的に取り組む必要があると、私は思っています。

 

 語彙数を増やすことと文法をがんばったことは大正解だったのです。でも、そこから先のトレーニングを理解しておらず迷子状態、迷走していたことが、今ならよく分かります。

 

 中国語圏に住んでいれば話は別ですが、日本に住んでいる人が中国語を話せるようになるために最終的に必要なトレーニングは通訳練習だと思います。

 

 ただ、重要なのは、正しい発音が定着した上で通訳トレーニングをすること。 そして、基礎的な文法(言葉の並べ方)を理解すること。この2つの基礎が仕上がったら、即通訳練習を開始することをお勧めします。

 

 ちなみに、正しい発音が定着しないうちに語彙数を増やすのは、かなり効率が悪い作業とも言えます。不安定な発音が身についてしまうと、それを後から矯正するのは至難の業です。私の教室の発音矯正のレッスンでもそのことは骨身に染みています。発音矯正を受講してくださっている生徒さん方を見ていて、あくまでイメージですが、初めて単語を覚える時に費やす時間の、軽く倍以上は発音の矯正に時間がかかっているようです。

 

 単語の意味や使い方を暗記すると同時に正しい発音で読めるようにしておくのが理想的ですし、会話力に直結します。

 

 当時の私もそうでしたが、テスト対策の中で重視されるのは語彙数を増やすことや文法理解、そしてリスニング。

 「正しく読む力」は後回しにしがちでした。

 

 私自身の失敗、遠回りから、皆さんにはぜひ、学習初期の段階から「話す、読む、聴くの三方良し」のバランスのとれた中国語力を養成していただければと思います。

 

 HSK6級をとってもしゃべれなかった私が通訳訓練を通して「話す回路」をつくれた経験から、今の中国語レッスンのスタイルが確立しました。

 

 中国語を習い始めた方には、ぜひとも発音の基礎固めを最優先課題にしていただけたらと思います。また、HSK3級以上のレベルの方で、ネイティブになかなか通じないとお悩みの方には、今一度、ご自身の発音のクオリティを点検していただければと思います。

 

 当教室では、初級レベルから通訳訓練を受けることができる、業界初の画期的なレッスンをご用意しています。ぜひ、お気軽にご相談ください。