言葉の持つ魅力

 

  突然就走到了西藏』の本を開きます。今から始まる、読書マラソン、どこまで続けられるかのスタート地点。本文の一番目の章、チャプター1の第一行目 はこう書いてありました。

 

 20118月、画皮青,束工作的我一时间剧组飞往拉

 

 簡潔な一行です。工作は習った単語。そして、飛ぶと往くという字。更にチベットの都、ラサ(とあるので、ラサに飛んで行ったのかな、という程度の理解。分からない言葉を飛ばしてみても大体分かる。正確な訳はできないけれど、漢字の雰囲気から意味はなんとなく分かる。これは、読んでいけそうかなと少しホッとして、冷静になり、辞書を引きます。ってなんだろう?

 

 辞書にはこうありました。

1 著作を完成する;原稿に最後の手を入れる。(昔、青竹に文字を書く際、まず青竹を火であぶって青みを消してから文字を書いたことから)

2 (製茶工程の一つ)積んだ茶の葉を熱処理して発酵を防ぎ、茶特有の色を変色させずに柔らかくし、加工しやすくする。

 

 最初の行のたったの一つの分からない単語が、ふわっと中国文化エリアまで私を連れて行ってくれます。竹に字を書く前に火であぶる? 更に調べてみると、書き易くしたり、虫食いを防ぐ意味もあったそう。そして、2番目の意味。中国茶を買ったときに、店員さんが作り方を説明してくれたことを思い出しました。日本茶は蒸すけれど、中国茶は釜炒りすると。その過程が「殺す青」と書く「」。長い時間を経て、現代にまで届けられている言葉。人々の営みから生まれた言葉。その魅力に惹きつけられます。青竹をあぶり、書き付ける昔の官吏の姿や、青々としたみずみずしい茶葉が釜の中で炒られる様子が勝手に渦巻きました。

 

 本文に返って、さんは『画皮』という映画を完成させて、ラサへ行ったんだと分かりました。映画も著作。ピッタリ辞書の意味がはまる爽快感。ラサで坤さんに何が起こるのだろうと第二行に取り掛かります。

 

 今の自分の語学力で一冊の本を読もうなんて、恥ずかしいおごり、という気分がホロホロと解けていくのが分かりました。今、確実に中国語を楽しんでいると思えたからです。