迷わずに進む

 

 自らのスペック以上のチャレンジだった中国書籍の原書読解

 

 先生にも苦労をかけっぱなし、単語帳を作っても新出単語の山で覚えきず、途中からは放棄状態、文法の解説も頭に入ってくるような来ないような。それでもこのチャレンジは、途切れないワクワクと「もっと中国語がわかるようになりたい」という気分を毎回与えてくれます。

 

 本の内容は、さんの貧しかった子供時代の生い立ちに始まり、役者としての急激な成功、裕福になって見失ったもの、そしてメインの話はボランティア活動。北京の学生たちを連れてトレッキングに行く様子が生き生きと描かれています。

 

 「今時の若い子は」と大人が戸惑い、愚痴る様子は古今東西同じテーマ。昭和の熱い男を思わせるさんが大学生と子供のように言い争いをしたり、説教中に逆にダメ出しされたりと、なかなか愉快なシーンが満載。大スターとして扱って欲しくないと繰り返しつつ「この俺に反論する気か?」とすぐ頭に血が上り、一方で健気に頑張る学生たちの姿に目頭を熱くし、不甲斐ない自分に落ち込んだりと、日々の人間的な姿がリアルに垣間見えるのです。

 

 映画撮影の裏話や有名な監督や女優さんとの交友録など、ここまで書いても大丈夫?と私生活描写も結構ハラハラさせられます。きっとこの本を手に取る人々は彼のファンではなくても、中国語の壁さえなければ、カウチに寝転んで、楽しみながら気軽に読破するのではないかと思います。

 

 読解は大変で、まさに遅々たる歩み。それでも、先生と一緒にさんの行動に関心したり、クスッと笑ったり、二人の感想や雑談も飛び交う楽しい時間でした。そしてある日、先生がふとつぶやいたひと言が私を勇気づけてくれました。

 

 「少し中国語をやったら、本を一冊読む。みんなもそうすればいいのに」

 

 先生の本音を耳にして、この道はもはやけもの道ではなくなりました。胸を張って爽快に進んでいい、と上書きされたのです。