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スピードも大切です

 母音の話が続いたので、今日は発音ではなくて「中国語を楽しむ」ためのトレーニングについて書きます。

 

 YouTubeでもブログでも声調とピンインの話をしつこくしているのですが、そんな私のレッスンを受けてくれている皆さんは、「思ったより大変」「すごく疲れる」などとつぶやきながらもかなり早いペースで標準的な発音が定着していきます。

 

 発音が定着し始めたら、次は力みをとってナチュラルさを出していくトレーニングをします。それと同時進行させるのが単語とフレーズのテンポアップの練習。なぜ、私がそこにこだわるかというと、私自身の学習体験の反省、というか、もっとこんな風に教えてほしかったと思うことを皆さんにお伝えしたいからです。

 

 私は30年前、発音に非常に厳しい、東北出身の先生方から中国語を教えていただきましたが、標準的な発音は身についたものの、中国語ネイティブとのコミュニケーションに耐えうるスピード感やナチュラルさを出す訓練は受けませんでした。

 

 初めて参加した中国人留学生との懇親パーティで音読の宿題のように中国語を話した私に、その日お話したほぼすべての方から「あなたは日本語でもこんなにゆっくりしゃべるのですか?」と不思議そうな顔で聞かれました。

 

 当時はYouTubeもSNSもない時代で、スピーキングのお手本は学校の先生とNHKの中国語講座に登場する人たちだけでした。そして、私は自分の中国語のしゃべり方を客観的に聴くこともなくインプットばかりの生活をしていたので、自分の話す中国語の速度については全く無頓着だったのです。

 

 速くしゃべろうとしても、すでにのんびりしゃべることがクセになってしまっているので口が回りません。舌が追いつきません。東北の先生方のおかげで発音矯正はこの方一度もしたことがありませんが、スピード矯正には長い時間を費やすことになりました。

 

 ある程度のスピードで話せるようになってくると、不思議とナチュラルスピードの中国語を聞き取れるようになってきました。しゃべる力と聞く力は連動しているのですね。

 

 一度慣れてしまったこと、体に染みついてしまった習慣を別の内容やペースに取り換えるためには、多くの時間と労力を費やします。このような経験から、うちの教室に来てくださる皆さんには、かなり早い段階にナチュラルスピードを目指したトレーニングをカリキュラムに組み込みこんでいます。

 

 すべては、中国語コミュニケーションを楽しむための工夫です。