為末大さんの講演を聞いていて、「そういうこと、語学でもあるな。」と思いました。スランプです。為末さんは現役時代に、ご自身の新しい記録が出るまでに最長で10年間かかったことがあるそうです。オリンピアンと自分を比べるのはおこがましいのですが、私は30代から40代にかけて約10年間、中国語力が伸び悩んだスランプ期でした。
思い当たる原因は一つだけ。中国語を楽しめていなかったからだと思います。
当時、通っていた通訳養成スクールのサイマルでは、一クラス15名のうち中国語母語話者と日本語母語話者が半々でした。優秀な人たちが集まっていました。通訳技能の訓練では、毎回、私のパフォーマンスはクラスの中でも飛びぬけて最悪だったので、授業後はマリアナ海溝より深い自己嫌悪を引きずって帰宅の途についていました。
一番、馬鹿げていたと思うのは、実技が全くできていないくせに、同時通訳者の養成クラスに在籍していたことを密かに鼻にかけていたことです。当時、私は中国語学習者の最後の砦が同通訓練だと思っていました。ここまで来られたんだから上出来、ぐらいに自分のことを思っていたのです。
実力がないのにプライドが高い。周りの人と比べて、優越感と自己嫌悪の間を行ったり来たりしていました。失敗して笑われるのが何より恐かった。挙句の果てに、「私は中国語が大好きなのに、中国語は私を寄せつけない。」などと訳がわからない言い訳をしていじけました。坂を転がり落ちるように、どんどんしゃべれなくなっていきました。
あの時の私に言ってやりたい。
「実力とか努力とかが足りないんじゃなくて、練習量が全然足りてないんだよ。だから、成長も上達もするわけないんだよ。」と。
練習量が足りなければ上達はしないし、成長を自分で感じられなければ、やっていても全然、楽しくないわけです。
ある時、「中国語に好かれていなくても、私が中国語を好きなことが一番重要だ。」と思ったのです。
周りは関係ない、自分の「ただ好き」という気持ちに集中できたあたりから、どんどん中国語を話すことが楽しくなったと思います。
楽しければ、もっとしゃべりたいという気持ちが湧いてきます。もっと流暢に話せるようになりたいと思います。
通じた時の喜びは脳を直撃し、体と心の働きをポジティブに活性化してくれます。
その喜び(話題によっては気まずくなる時もありますが、それも含めたコミュニケーションできる喜び)をまた感じたくて、日々、トレーニングをしています。
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joyandy (月曜日, 06 12月 2021 17:23)
読んでいて、泣きそうになりました。
自分の事だと思いました。
手話通訳になったものの、圧倒的に実力不足で現場では使いものになりません。
迷惑もかけますし、通訳研修では皆さんの表情から「この人、全然駄目じゃん」と思われているのが分かります。
いつも研修が終わった後は、一目散に帰宅します。誰かと話しをするのも辛く、底無し沼に沈んでいくような気持ちです。
でも、分かりました。そうか、私は手話を楽しんでなかった。手話でのコミュニケーションが好きなのに楽しんでいなかった。
今日も、これから研修があります。今日は、楽しむ事に集中します。
励まされました、ありがとうございます。