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中国語の「a」と「あ」の違いについて

 腹話術ができることを考えると、日本語の母音の発音は、口周辺の筋肉はそれほど使わなくてもよいのかと思ったりします。エビデンスはありません。ただ、日本語と中国語の母音の発音比べをしていると、音の作り方がずいぶん違うと感じるのです。

 中国語の「a」を発音する時、まだ発音に慣れていない段階では口を大きめに開けて発音することをおすすめしています。口先が開いている、というよりは、あごの関節がしっかり開いている感じです。舌も下あごに置かれていて、口腔内は音を遮る障害物がない状態です。このようなことを意識して発音すると、とてもクリアな明るい感じの「a」ができあがります。

 日本語の「あ」感覚で、あまり口を開けずに「a」を読むことに慣れてしまうと、後々、ちょっとした発音の壁にぶつかるかもしれません。様々な子音と組み合わせて発音する時に「a」と「e」の区別がつきにくくなってしまうということは、よく見かける事例です。例えば「お茶/茶」と「車/车」はピンインでそれぞれ「cha」「che」と表記されますが、「cha」が口をしっかり開けて発音できていれば、「che」との発音の区別は簡単につきます。

 最近、受講者の方と発音練習をしていて思うのは、日本人にとっては、むしろ「e」のほうが楽に出せるのかもしれないということです。「e」は口周辺の力みがない発音ですから、母音の発音にそれほど顔面の筋力を使わない日本語ネイティブの私たちにとっては、発音しやすいのではないでしょうか。

 試しにワンフレーズ、もしくは短文を読み上げてみてください。「a」の発音の漢字に〇をつけて、「a」を意識して発音するだけで、かなり中国語らしさが出てきます。